一瞬で、永遠で、

 自分は今、子育てについては人生の中で一番幸せな時期にいるという確信がある。

 歳を取って振り返った時に「気が付かないうちにあっという間に終わってました。一番幸せな時期は自覚なく過ぎていくものですね」なんて言うつもりはない。今だと思う。一瞬で、永遠で、ずっと忘れたくない、そう思いながら毎日を過ごしている。

 母親がよく言う「子育てはやり切った。何もやり残したことはない」という台詞が好きだ。私もいつかそんな風に思えるようにしたい。実態としては、やることが多すぎて時間的な余裕はなく、肉体的にも限界突破で毎晩よく眠れるという感じではあるが、子供の言動や笑顔に癒されて精神的に救われることが本当に多い。

 私の頭の中では、子育ては仕事のようにタスクがいくつか設定されていて、各タスクには線表が引かれて、私は忙しくPDCAを回している。例えば、臍ヘルニアを手術すること、便秘を解消すること、イボを治すこと、指しゃぶりを終わらせること。そういう表面的で目標設定しやすいタスクもあれば、いつも子供に誠実でいたか、感情に任せて叱っていないか、スキンシップは足りているか、過不足なく愛していることが伝わっているかなどの本質的で評価が難しいタスクもある。

 私が子育てで真に達成したいことは何だろう。

 シンプルに「子供が育つ」ということなのであれば、実は親が放っておいても立派に子供が育つケースはあるし、上司がやっていたようにお金を出してプロのシッターが育てたって別にいいはずで、ましてや親以外の大勢の大人が関わったほうがバランスの良い人間になるという説もある中で、私は人に任せることを感覚的に許容できずに仕事の量を減らしてでも主体的に関わることを選んだ。勝手に育つんだろうけど、せっかくここに生まれてきてくれたのだから、この環境でこの親でできる最高の子育てをしてあげたい。何か特別なことをしてあげられるわけではないけれど、有形にしろ無形にしろ子供に与えたものは、子供の感情と結びついて、いずれ個性という形で答えが出る。

 私はその答えを楽しみに待っている。